「投稿者: magoroku@tnnt」の記事一覧

処女時代の追憶 断片三種 —–岡本かの子
     ○  処女時代の私は、兄と非常に密接して居ました。兄に就いていろいろの思ひ出があります。十…
春 ―二つの連作―—– 岡本かの子
(一) 一  加奈子は気違いの京子に、一日に一度は散歩させなければならなかった。でも、京子は危くて独り…
縮緬のこころ—– 岡本かの子
 おめしちりめんといふ名で覚えてゐる――それでつくられてゐた明治三十年代、私の幼年時代のねんねこ[#…
酋長—– 岡本かの子
 朝子が原稿を書く為に暮れから新春へかけて、友達から貸りた別荘は、東京の北|端《はず》れに在った。…
秋雨の追憶—– 岡本かの子
 十月初めの小雨の日茸狩りに行つた。山に這入ると松茸の香がしめつた山氣に混つて鼻に泌みる。秋雨の山…
秋の夜がたり—— 岡本かの子
 中年のおとうさんと、おかあさんと、二十歳前後のむすこと、むすめの旅でありました。  旅が、旅程の丁…
秋の七草に添へて—- 岡本かの子
萩、刈萱、葛、撫子、女郎花、藤袴、朝顔。  これ等の七種の草花が秋の七草と呼ばれてゐる。この七草の種…
取返し—–物語 岡本かの子
   前がき  いつぞやだいぶ前に、比叡の山登りして阪本へ下り、琵琶湖の岸を彼方《あちら》此方《こち…
時代色 ―歪んだポーズ —–岡本かの子
センチメンタルな気風はセンチと呼んで唾棄《だき》軽蔑《けいべつ》されるようになったが、世上《せじょ…
慈悲—— 岡本かの子
 ひとくちに慈悲ぶかい人といえば、誰にでもものを遣る人、誰のいうことをも直ぐ聞き入れてやる人、何事…
私の書に就ての追憶—— 岡本かの子
 東京の西郊に私の実家が在つた。母屋の東側の庭にある大銀杏の根方を飛石づたひに廻つて行くと私の居室…
山茶花—–岡本かの子
ひとの世の男女の  行ひを捨てて五年  夫ならぬ夫と共《ともに》棲《す》み  今年また庭のさざんくわ …
山のコドモ—–岡本かの子
ヤマキチ ハ ヤマオク ノ キコリ ノ コ デアリマシタ。チイサイ トキカラ、ヤマ ノ ケモノ ヤ…
雜煮—–岡本かの子
維新前江戸、諸大名の御用商人であつた私の實家は、維新後東京近郊の地主と變つたのちまでも、まへの遺風…
桜——岡本かの子
桜ばないのち一ぱいに咲くからに生命《いのち》をかけてわが眺《なが》めたり さくら花《ばな》咲きに咲き…
高原の太陽—–岡本かの子
「素焼の壺と素焼の壺とただ並んでるようなあっさりして嫌味のない男女の交際というものはないでしょうか…
鯉魚—–岡本かの子
    一  京都の嵐山《あらしやま》の前を流れる大堰川《おおいがわ》には、雅《みや》びた渡月橋《と…
五月の朝の花—–岡本かの子
ものものしい桜が散った。  だだっぴろく……うんと手足を空に延ばした春の桜が、しゃんら、しゃらしゃらと…
呼ばれし乙女—–岡本かの子
 師の家を出てから、弟子の慶四郎は伊豆箱根あたりを彷徨《うろつ》いているという噂《うわさ》であった…
現代若き女性気質集—— 岡本かの子
 これは現代の若き女性気質の描写《びょうしゃ》であり、諷刺《ふうし》であり、概観《がいかん》であり…