「投稿者: magoroku@tnnt」の記事一覧

鶴は病みき—– 岡本かの子
 白梅の咲く頃となると、葉子はどうも麻川荘之介氏を想《おも》い出していけない。いけないというのは嫌…
蔦の門—– 岡本かの子
 私の住む家の門には不思議に蔦《つた》がある。今の家もさうであるし、越して来る前の芝、白金《しろが…
茶屋知らず物語—– 岡本かの子
 元禄|享保《きょうほう》の頃、関西に法眼、円通という二禅僧がありました。いずれも黄檗《おうばく》…
男心とはかうしたもの 女のえらさと違う偉さ—– 岡本かの子
  尊敬したい気持  結婚前は、男子に対する観察などいつても、甚だ漠然としたもので、寧ろこの時代には…
荘子—– 岡本かの子
 紀元前三世紀のころ、支那では史家が戦国時代と名づけて居る時代のある年の秋、魏の都の郊外|櫟社《れ…
雪の日—– 岡本かの子
 伯林《ベルリン》カイザー街の古い大アパートに棲んで居た冬のことです。外には雪が降りに降っていまし…
雪—– 岡本かの子
  遅い朝日が白み初めた。  木琴入りの時計が午前七時を打つ。ヴァルコンの扉《ドア》が開く。 「フラ…
星—– 岡本かの子
 晴れた秋の夜は星の瞬きが、いつもより、ずつとヴイヴイツトである。殊に月の無い夜は星の光が一層燦然…
雛妓 —–岡本かの子
 なに事も夢のようである。わたくしはスピードののろい田舎の自動車で街道筋を送られ、眼にまぼろし[#…
新時代女性問答—– 岡本かの子
一平 兎《と》に角《かく》、近代の女性は型がなくなった様《よう》だね。 かの子 形の上でですか、心の…
唇草—– 岡本かの子
 今年の夏の草花にカルセオラリヤが流行《はや》りそうだ。だいぶ諸方に見え出している。この間花屋で買…
食魔—– 岡本かの子
 菊萵苣《きくぢさ》と和名はついているが、原名のアンディーヴと呼ぶ方が食通の間には通りがよいようで…
上田秋成の晩年—– 岡本かの子
文化三年の春、全く孤独になつた七十三の翁《おきな》、上田秋成は京都南禅寺内の元の庵居《あんきょ》の…
小町の芍薬—– 岡本かの子
 根はかち/\の石のやうに朽ち固つてゐながら幹からは新枝を出し、食べたいやうな柔かい切れ込みのある…
小学生のとき与へられた教訓—– 岡本かの子
 或る晴れた秋の日、尋常科の三年生であつた私は学校の運動場に高く立つてゐる校旗棒を両手で握つて身を…
勝ずば —–岡本かの子
 夜明けであった。隅田川以東に散在する材木堀の間に挟まれた小さな町々の家並みは、やがて孵化《ふか》…
女性崇拝—– 岡本かの子
西洋人は一体《いったい》に女性尊重と見做《みな》されているが、一概《いちがい》にそうも言い切れない…
女性の不平とよろこび—— 岡本かの子
女が、男より行儀をよくしなければならないということ。  人前で足を出してはいけない、欠伸《あくび》を…
女性と庭—– 岡本かの子
出入りの植木屋さんが廻つて来て、手が明いてますから仕事をさして欲しいと言ふ。頼む。自分の方の手都合…
初夏に座す—– 岡本かの子
人生の甘酸を味はひ分けて来るほど、季節の有難味が判つて来る。それは「咲く花時を違へず」といつた――季…