江見水蔭 壁の眼の怪—— 江見水蔭 一 寛政《かんせい》五年六月中旬の事であった。羽州《うしゅう》米沢《よねざわ》の典薬|勝成裕《かつせいゆう》が、御隠居|上杉鷹山《うえすぎようざん》侯(治憲《はるのり》)の内意を受けて、一行十五人、深山幽谷に薬草を採りに分け入るという、そ... 2019.05.10 江見水蔭
江見水蔭 備前天一坊—— 江見水蔭 一 徳川《とくがわ》八代の将軍|吉宗《よしむね》の時代(享保《きょうほう》十四年)その落胤《らくいん》と名乗って源氏坊《げんじぼう》天一が出た。世上過ってこれを大岡捌《おおおかさば》きの中に編入しているのは、素《もと》より取るに足らぬけれ... 2019.05.10 江見水蔭
江見水蔭 丹那山の怪—— 江見水蔭 一 東海道《とうかいどう》は三島《みしま》の宿《しゅく》。本陣|世古六太夫《せころくだゆう》の離れ座敷に、今宵の宿を定めたのは、定火消《じょうびけし》御役《おやく》酒井内蔵助《さかいくらのすけ》(五千石)の家臣、織部純之進《おりべじゅんの... 2019.05.10 江見水蔭
江見水蔭 死剣と生縄——- 江見水蔭 一 武士の魂。大小の二刀だけは腰に差して、手には何一つ持つ間もなく、草履突掛けるもそこそこに、磯貝竜次郎《いそがいりゅうじろう》は裏庭へと立出《たちいで》た。 「如何《いか》ような事が有ろうとも、今日こそは思い切って出立致そう」 武者修... 2019.05.10 江見水蔭
江見水蔭 月世界跋渉記—— 江見水蔭 引力に因り月世界に墜落。探検者の気絶 「どうしよう。」 と思うまもなく、六人の月世界探検者を乗せた空中飛行船|翔鷲号《しょうしゅうごう》は非常な速力で突進して月に落ち、大地震でも揺ったような激しい衝動をうけたと思うと、一行は悉《ことごと》く... 2019.05.10 江見水蔭
江見水蔭 怪異黒姫おろし—— 江見水蔭 一 熊! 熊! 荒熊。それが人に化けたような乱髪、髯面《ひげづら》、毛むくじゃらの手、扮装《いでたち》は黒紋付の垢染《あかじ》みたのに裁付袴《たっつけばかま》。背中から腋の下へ斜《はす》に、渋段々染の風呂敷包を結び負いにして、朱鞘の大小ぶ... 2019.05.10 江見水蔭
江見水蔭 怪異暗闇祭—— 江見水蔭 一 天保《てんぽう》の頃、江戸に神影流《しんかげりゅう》の達人として勇名を轟かしていた長沼正兵衛《ながぬましょうべえ》、その門人に小机源八郎《こづくえげんぱちろう》というのがあった。怪剣士として人から恐れられていた。 「小机源八郎のは剣法... 2019.05.10 江見水蔭
江見水蔭 悪因縁の怨—— 江見水蔭 一 天保銭《てんぽうせん》の出来た時代と今と比べると、なんでも大変に相違しているが、地理でも非常に変化している。現代で羽田《はねだ》というと直ぐと稲荷《いなり》を説き、蒲田《かまた》から電車で六七分の間に行かれるけれど、天保時代にはとても... 2019.05.10 江見水蔭