「岡本かの子」の記事一覧

小学生のとき与へられた教訓—– 岡本かの子
 或る晴れた秋の日、尋常科の三年生であつた私は学校の運動場に高く立つてゐる校旗棒を両手で握つて身を…
勝ずば —–岡本かの子
 夜明けであった。隅田川以東に散在する材木堀の間に挟まれた小さな町々の家並みは、やがて孵化《ふか》…
女性崇拝—– 岡本かの子
西洋人は一体《いったい》に女性尊重と見做《みな》されているが、一概《いちがい》にそうも言い切れない…
女性の不平とよろこび—— 岡本かの子
女が、男より行儀をよくしなければならないということ。  人前で足を出してはいけない、欠伸《あくび》を…
女性と庭—– 岡本かの子
出入りの植木屋さんが廻つて来て、手が明いてますから仕事をさして欲しいと言ふ。頼む。自分の方の手都合…
初夏に座す—– 岡本かの子
人生の甘酸を味はひ分けて来るほど、季節の有難味が判つて来る。それは「咲く花時を違へず」といつた――季…
処女時代の追憶 断片三種 —–岡本かの子
     ○  処女時代の私は、兄と非常に密接して居ました。兄に就いていろいろの思ひ出があります。十…
春 ―二つの連作―—– 岡本かの子
(一) 一  加奈子は気違いの京子に、一日に一度は散歩させなければならなかった。でも、京子は危くて独り…
縮緬のこころ—– 岡本かの子
 おめしちりめんといふ名で覚えてゐる――それでつくられてゐた明治三十年代、私の幼年時代のねんねこ[#…
酋長—– 岡本かの子
 朝子が原稿を書く為に暮れから新春へかけて、友達から貸りた別荘は、東京の北|端《はず》れに在った。…
秋雨の追憶—– 岡本かの子
 十月初めの小雨の日茸狩りに行つた。山に這入ると松茸の香がしめつた山氣に混つて鼻に泌みる。秋雨の山…
秋の夜がたり—— 岡本かの子
 中年のおとうさんと、おかあさんと、二十歳前後のむすこと、むすめの旅でありました。  旅が、旅程の丁…
秋の七草に添へて—- 岡本かの子
萩、刈萱、葛、撫子、女郎花、藤袴、朝顔。  これ等の七種の草花が秋の七草と呼ばれてゐる。この七草の種…
取返し—–物語 岡本かの子
   前がき  いつぞやだいぶ前に、比叡の山登りして阪本へ下り、琵琶湖の岸を彼方《あちら》此方《こち…
時代色 ―歪んだポーズ —–岡本かの子
センチメンタルな気風はセンチと呼んで唾棄《だき》軽蔑《けいべつ》されるようになったが、世上《せじょ…
慈悲—— 岡本かの子
 ひとくちに慈悲ぶかい人といえば、誰にでもものを遣る人、誰のいうことをも直ぐ聞き入れてやる人、何事…
私の書に就ての追憶—— 岡本かの子
 東京の西郊に私の実家が在つた。母屋の東側の庭にある大銀杏の根方を飛石づたひに廻つて行くと私の居室…
山茶花—–岡本かの子
ひとの世の男女の  行ひを捨てて五年  夫ならぬ夫と共《ともに》棲《す》み  今年また庭のさざんくわ …
山のコドモ—–岡本かの子
ヤマキチ ハ ヤマオク ノ キコリ ノ コ デアリマシタ。チイサイ トキカラ、ヤマ ノ ケモノ ヤ…
雜煮—–岡本かの子
維新前江戸、諸大名の御用商人であつた私の實家は、維新後東京近郊の地主と變つたのちまでも、まへの遺風…