「岡本かの子」の記事一覧

巴里の秋—– 岡本かの子
 セーヌの河波《かわなみ》の上かわが、白《しら》ちゃけて来る。風が、うすら冷たくそのうえを上走り始…
巴里の唄うたい—– 岡本かの子
 彼等の決議  市会議員のムッシュウ・ドュフランははやり唄は嫌いだ。聴いていると馬鹿らしくなる。あん…
巴里のむす子へ—– 岡本かの子
 巴里の北の停車場でおまえと訣《わか》れてから、もう六年目になる。人は久しい歳月という。だが、私に…
巴里のキャフェ ―朝と昼― —–岡本かの子
    旅人のカクテール  旅人《エトランゼ》は先ず大通《グランブールヴァル》のオペラの角のキャフェ…
桃のある風景—– 岡本かの子
 食欲でもないし、情欲でもない。肉体的とも精神的とも分野をつき止めにくいあこがれ[#「あこがれ」に…
東海道五十三次—– 岡本かの子
 風俗史専攻の主人が、殊《こと》に昔の旅行の風俗や習慣に興味を向けて、東海道に探査の足を踏み出した…
鶴は病みき—– 岡本かの子
 白梅の咲く頃となると、葉子はどうも麻川荘之介氏を想《おも》い出していけない。いけないというのは嫌…
蔦の門—– 岡本かの子
 私の住む家の門には不思議に蔦《つた》がある。今の家もさうであるし、越して来る前の芝、白金《しろが…
茶屋知らず物語—– 岡本かの子
 元禄|享保《きょうほう》の頃、関西に法眼、円通という二禅僧がありました。いずれも黄檗《おうばく》…
男心とはかうしたもの 女のえらさと違う偉さ—– 岡本かの子
  尊敬したい気持  結婚前は、男子に対する観察などいつても、甚だ漠然としたもので、寧ろこの時代には…
荘子—– 岡本かの子
 紀元前三世紀のころ、支那では史家が戦国時代と名づけて居る時代のある年の秋、魏の都の郊外|櫟社《れ…
雪の日—– 岡本かの子
 伯林《ベルリン》カイザー街の古い大アパートに棲んで居た冬のことです。外には雪が降りに降っていまし…
雪—– 岡本かの子
  遅い朝日が白み初めた。  木琴入りの時計が午前七時を打つ。ヴァルコンの扉《ドア》が開く。 「フラ…
星—– 岡本かの子
 晴れた秋の夜は星の瞬きが、いつもより、ずつとヴイヴイツトである。殊に月の無い夜は星の光が一層燦然…
雛妓 —–岡本かの子
 なに事も夢のようである。わたくしはスピードののろい田舎の自動車で街道筋を送られ、眼にまぼろし[#…
新時代女性問答—– 岡本かの子
一平 兎《と》に角《かく》、近代の女性は型がなくなった様《よう》だね。 かの子 形の上でですか、心の…
唇草—– 岡本かの子
 今年の夏の草花にカルセオラリヤが流行《はや》りそうだ。だいぶ諸方に見え出している。この間花屋で買…
食魔—– 岡本かの子
 菊萵苣《きくぢさ》と和名はついているが、原名のアンディーヴと呼ぶ方が食通の間には通りがよいようで…
上田秋成の晩年—– 岡本かの子
文化三年の春、全く孤独になつた七十三の翁《おきな》、上田秋成は京都南禅寺内の元の庵居《あんきょ》の…
小町の芍薬—– 岡本かの子
 根はかち/\の石のやうに朽ち固つてゐながら幹からは新枝を出し、食べたいやうな柔かい切れ込みのある…