「岡本かの子」の記事一覧

桜——岡本かの子
桜ばないのち一ぱいに咲くからに生命《いのち》をかけてわが眺《なが》めたり さくら花《ばな》咲きに咲き…
高原の太陽—–岡本かの子
「素焼の壺と素焼の壺とただ並んでるようなあっさりして嫌味のない男女の交際というものはないでしょうか…
鯉魚—–岡本かの子
    一  京都の嵐山《あらしやま》の前を流れる大堰川《おおいがわ》には、雅《みや》びた渡月橋《と…
五月の朝の花—–岡本かの子
ものものしい桜が散った。  だだっぴろく……うんと手足を空に延ばした春の桜が、しゃんら、しゃらしゃらと…
呼ばれし乙女—–岡本かの子
 師の家を出てから、弟子の慶四郎は伊豆箱根あたりを彷徨《うろつ》いているという噂《うわさ》であった…
現代若き女性気質集—— 岡本かの子
 これは現代の若き女性気質の描写《びょうしゃ》であり、諷刺《ふうし》であり、概観《がいかん》であり…
健康三題—– 岡本かの子
     はつ湯  男の方は、今いう必要も無いから別問題として、一体私は女に好かれる素質を持って居た…
決闘場—– 岡本かの子
 ロンドンの北隅ケンウッドの森には墨色で十数丈のシナの樹や、銀色の楡《にれ》の大樹が逞《たく》まし…
兄妹—– 岡本かの子
    ――二十余年前の春  兄は第一高等学校の制帽をかぶっていた。上質の久留米絣《くるめがすり》の羽…
愚なる(?!)母の散文詩—— 岡本かの子
 わたしは今、お化粧をせつせとして居ます。  けふは恋人のためにではありません。  あたしの息子太郎…
愚かな男の話—– 岡本かの子
「或る田舎に二人の農夫があった。両方共農作自慢の男であった。或る時、二人は自慢の鼻突き合せて喋《し…
金魚撩乱—– 岡本かの子
今日も復一はようやく変色し始めた仔魚《しぎょ》を一|匹《ぴき》二|匹《ひき》と皿《さら》に掬《すく…
気の毒な奥様—— 岡本かの子
 或る大きな都会の娯楽街《アミューズメントセンター》に屹立《きつりつ》している映画殿堂では、夜の部…
汗 ——岡本かの子
 ――お金が汗をかいたわ。」  河内屋の娘の浦子はさういつて松崎の前に掌《てのひら》を開いて見せた。ロ…
褐色の求道—– 岡本かの子
 独逸《ドイツ》に在る唯一の仏教の寺だという仏陀寺《ブッダハウス》へ私は伯林《ベルリン》遊学中三度…
街頭 (巴里のある夕)——- 岡本かの子
 二列に並んで百貨店ギャラレ・ラファイエットのある町の一席を群集は取巻いた。中には雨傘の用意までし…
快走—– 岡本かの子
 中の間で道子は弟の準二の正月着物を縫《ぬ》い終って、今度は兄の陸郎の分を縫いかけていた。 「それお…
過去世—– 岡本かの子
池は雨中の夕陽の加減で、水銀のやうに縁だけ盛り上つて光つた。池の胴を挟んでゐる杉木立と青|蘆《あし…
花は勁し—– 岡本かの子
 青みどろを溜めた大硝子箱の澱んだ水が、鉛色に曇つて来た。いままで絢爛に泳いでゐた二つのキヤリコの…
河明り—– 岡本かの子
 私が、いま書き続けている物語の中の主要人物の娘の性格に、何か物足りないものがあるので、これはいっ…