「2019年」の記事一覧

取返し—–物語 岡本かの子
   前がき  いつぞやだいぶ前に、比叡の山登りして阪本へ下り、琵琶湖の岸を彼方《あちら》此方《こち…
時代色 ―歪んだポーズ —–岡本かの子
センチメンタルな気風はセンチと呼んで唾棄《だき》軽蔑《けいべつ》されるようになったが、世上《せじょ…
慈悲—— 岡本かの子
 ひとくちに慈悲ぶかい人といえば、誰にでもものを遣る人、誰のいうことをも直ぐ聞き入れてやる人、何事…
私の書に就ての追憶—— 岡本かの子
 東京の西郊に私の実家が在つた。母屋の東側の庭にある大銀杏の根方を飛石づたひに廻つて行くと私の居室…
山茶花—–岡本かの子
ひとの世の男女の  行ひを捨てて五年  夫ならぬ夫と共《ともに》棲《す》み  今年また庭のさざんくわ …
山のコドモ—–岡本かの子
ヤマキチ ハ ヤマオク ノ キコリ ノ コ デアリマシタ。チイサイ トキカラ、ヤマ ノ ケモノ ヤ…
雜煮—–岡本かの子
維新前江戸、諸大名の御用商人であつた私の實家は、維新後東京近郊の地主と變つたのちまでも、まへの遺風…
桜——岡本かの子
桜ばないのち一ぱいに咲くからに生命《いのち》をかけてわが眺《なが》めたり さくら花《ばな》咲きに咲き…
高原の太陽—–岡本かの子
「素焼の壺と素焼の壺とただ並んでるようなあっさりして嫌味のない男女の交際というものはないでしょうか…
鯉魚—–岡本かの子
    一  京都の嵐山《あらしやま》の前を流れる大堰川《おおいがわ》には、雅《みや》びた渡月橋《と…
五月の朝の花—–岡本かの子
ものものしい桜が散った。  だだっぴろく……うんと手足を空に延ばした春の桜が、しゃんら、しゃらしゃらと…
呼ばれし乙女—–岡本かの子
 師の家を出てから、弟子の慶四郎は伊豆箱根あたりを彷徨《うろつ》いているという噂《うわさ》であった…
現代若き女性気質集—— 岡本かの子
 これは現代の若き女性気質の描写《びょうしゃ》であり、諷刺《ふうし》であり、概観《がいかん》であり…
健康三題—– 岡本かの子
     はつ湯  男の方は、今いう必要も無いから別問題として、一体私は女に好かれる素質を持って居た…
決闘場—– 岡本かの子
 ロンドンの北隅ケンウッドの森には墨色で十数丈のシナの樹や、銀色の楡《にれ》の大樹が逞《たく》まし…
兄妹—– 岡本かの子
    ――二十余年前の春  兄は第一高等学校の制帽をかぶっていた。上質の久留米絣《くるめがすり》の羽…
愚なる(?!)母の散文詩—— 岡本かの子
 わたしは今、お化粧をせつせとして居ます。  けふは恋人のためにではありません。  あたしの息子太郎…
愚かな男の話—– 岡本かの子
「或る田舎に二人の農夫があった。両方共農作自慢の男であった。或る時、二人は自慢の鼻突き合せて喋《し…
金魚撩乱—– 岡本かの子
今日も復一はようやく変色し始めた仔魚《しぎょ》を一|匹《ぴき》二|匹《ひき》と皿《さら》に掬《すく…
気の毒な奥様—— 岡本かの子
 或る大きな都会の娯楽街《アミューズメントセンター》に屹立《きつりつ》している映画殿堂では、夜の部…