「2019年」の記事一覧

十九の秋—– 永井荷風
 近年新聞紙の報道するところについて見るに、東亜の風雲はますます急となり、日支同文の邦家《ほうか》…
寺じまの記—– 永井荷風
雷門《かみなりもん》といっても門はない。門は慶応元年に焼けたなり建てられないのだという。門のない門…
黄昏の地中海 —–永井荷風
 ガスコンの海湾を越え葡萄牙《ポルトガール》の海岸に沿うて東南へと、やがて西班牙《スペイノ》の岸に…
一月一日—– 永井荷風
 一月一日の夜、東洋銀行米国支店の頭取|某《なにがし》氏の社宅では、例年の通り、初春を祝ふ雑煮餅の…
或夜 —–永井荷風
季子《すゑこ》は省線市川驛の待合所に入《はい》つて腰掛に腰をかけた。然し東京へも、どこへも、行かう…
にぎり飯—–永井荷風
 深川古石場町の警防団員であつた荒物屋の佐藤は三月九日夜半の空襲に、やつとのこと火の中を葛西橋近く…
つゆのあとさき—-永井荷風
一  女給《じょきゅう》の君江《きみえ》は午後三時からその日は銀座通のカッフェーへ出ればよいので、市…
すみだ川—–永井荷風
一  俳諧師《はいかいし》松風庵蘿月《しょうふうあんらげつ》は今戸《いまど》で常磐津《ときわず》の師…