「投稿者: magoroku@tnnt」の記事一覧

雪の日—– 近松秋江
 あまり暖いので、翌日は雨かと思って寝たが、朝になってみると、珍らしくも一面の銀世界である。鵞鳥《…
黒髪—– 近松秋江
     一  ……その女は、私の、これまでに数知れぬほど見た女の中で一番気に入った女であった。どうい…
湖光島影 琵琶湖めぐり—— 近松秋江
 比叡山《ひえいざん》延暦寺《えんりやくじ》の、今、私の坐つてゐる宿院の二階の座敷の東の窓の机に凭…
狂乱—– 近松秋江
     一  二人の男の写真は仏壇の中から発見されたのである。それが、もう現世にいない人間であるこ…
伊賀國—– 近松秋江
 伊賀國は小國であるけれども、この國に入るには何方からゆくにも相應に深い山を踰《こ》えねばならぬ。…
伊賀、伊勢路—– 近松秋江
 私には、また旅を空想し、室内旅行をする季節となつた。東京の秋景色は荒寥としてゐて眼に纏りがない。…
うつり香—– 近松秋江
 そうして、それとともにやる瀬のない、悔しい、無念の涙がはらはらと溢《こぼ》れて、夕暮の寒い風に乾…
昔の盲人と外国の盲人—— 宮城道雄
 昔は盲人に特別の位を与えたものである。よく何市、何市とあるが、あれも市名《いちな》といって、盲人…
声と性格—– 宮城道雄
 私は盲人であるので、すべてのことを声で判断する。殊に婦人の美しさとか、若い乙女の純な心とかは、そ…
声と人柄—– 宮城道雄
 或時、横須賀から東京に向う省線に逗子駅から乗ったことがあった。ところがその電車が非常に混んでいて…
声と食物—– 宮城道雄
 私の経験から歌についていうと、言葉と節とが調和する時と、しない時とがある。従って、外国の歌を日本…
心の調べ—– 宮城道雄
 どんな美しい人にお会いしても、私はその姿を見ることはできませんが、その方の性格はよく知ることがで…
純粋の声—– 宮城道雄
 私が上野の音楽学校に奉職することになった時、色々話があるからというので、或る日学校に呼ばれて行っ…
春雨—– 宮城道雄
 家の者が、「座右寶」に梅原氏の絵が出ていると言うので、私はさわらせて貰った。さわってみても私に絵…
耳の日記—– 宮城道雄
    友情  いつであったか、初夏の気候のよい日に内田百間氏がひょっこり私の稽古場を訪ねて来て、今…
私の若い頃—– 宮城道雄
 私は七八歳の頃、まだ眼が少し見えていたが、その頃何よりもつらく感じた事は、春が来て四月になると、…
私のすきな人 宮城道雄
 私のすきな人はたくさんあるので、みな書くことは出来ないが、最近倒れた印度のガンジー翁などはすきで…
山の声—– 宮城道雄
 私が失明をするに至った遠因ともいうべきものは、私が生れて二百日程たってから、少し目が悪かったこと…
五十年をかえりみて—-宮城道雄
 この度の音楽生活五十年記念演奏会に際し、皆様に御支援を戴いたことを心から感謝いたします。  私は九…
垣隣り—– 宮城道雄
普通の目の見える人が、自分の家のあたりの景色に親しみを持って見るのと同様に、私には自分の住んでいる…