「投稿者: magoroku@tnnt」の記事一覧

前哨——黒島傳治
    一 豚  毛の黒い豚の群が、ゴミの溜った沼地を剛い鼻の先で掘りかえしていた。  浜田たちの中…
選挙漫談——黒島傳治
投票を売る  投票値段は、一票につき、最低五十銭から、一円、二円、三円と、上って、まず、五円から、十…
戦争について——黒島傳治
 ここでは、遠くから戦争を見た場合、或は戦争を上から見下した場合は別とする。  銃をとって、戦闘に参…
雪のシベリア——黒島傳治
      一  内地へ帰還する同年兵達を見送って、停車場《ていしゃば》から帰って来ると、二人は兵舎…
窃む女——黒島傳治
一  子供が一人ぐらいの時はまだいゝが、二人三人となると、育てるのがなかなか容易でない。子供のほしが…
小豆島——黒島傳治
 用事があって、急に小豆島へ帰った。  小豆島と云えば、寒霞渓のあるところだ。秋になると都会の各地か…
自伝——黒島傳治
 明治三十一年十二月十二日、香川県小豆郡苗羽村に生れた。父を兼吉、母をキクという。今なお健在してい…
自画像——黒島傳治
なか/\取ッつきの悪い男である。ムッツリしとって、物事に冷淡で、陰鬱で、不愉快な奴だ。熱情なんど、…
四季とその折々——黒島傳治
 小豆島にいて、たまに高松へ行くと気分の転換があって、胸がすツとする。それほど変化のない日々がこの…
砂糖泥棒——黒島傳治
 与助の妻は産褥についていた。子供は六ツになる女を頭に二人あった。今度で三人目である。彼はある日砂…
国境——-黒島伝治
     一  ブラゴウエシチェンスクと黒河を距《へだ》てる黒竜江は、海ばかり眺めて、育った日本人に…
穴——-黒島傳治
      一  彼の出した五円札が贋造紙幣だった。野戦郵便局でそのことが発見された。  ウスリイ鉄…
鍬と鎌の五月——黒島傳治
農民の五月祭を書けという話である。  ところが、僕は、まだ、それを見たことがない。昨年、山陰地方で行…
外米と農民——黒島傳治
 隣家のS女は、彼女の生れた昨年の旱魃にも深い貯水池のおかげで例年のように収穫があった村へ、お米の…
海賊と遍路——黒島傳治
 私の郷里、小豆島にも、昔、瀬戸内海の海賊がいたらしい。山の上から、恰好な船がとおりかゝるのを見き…
渦巻ける烏の群——黒島伝治
   一 「アナタア、ザンパン、頂だい。」  子供達は青い眼を持っていた。そして、毛のすり切れてしま…
愛読した本と作家から——-黒島傳治
 いろ/\なものを読んで忘れ、また、読んで忘れ、しょっちゅう、それを繰りかえして、自分の身についた…
まかないの棒——黒島傳治
 京一が醤油醸造場へ働きにやられたのは、十六の暮れだった。  節季の金を作るために、父母は毎朝暗いう…
パルチザン・ウォルコフ——黒島伝治
       一  牛乳色《ちちいろ》の靄《もや》が山の麓《ふもと》へ流れ集りだした。  小屋から出…
チチハルまで——黒島伝治
       一  十一月に入ると、北満は、大地が凍結を始める。  占領した支那家屋が臨時の営舎だっ…