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佐々木直次郎

宝島 宝島 スティーブンソン Stevenson Robert Louis-佐々木直次郎訳

[#宝島の地図(fig33206_01.png、横708×縦1094)入る] [#改ページ] 買うのを躊躇する人に もしも船乗《ふなのり》調子の船乗物語や、  暴風雨《あらし》や冒険、暑さ寒さが、 もしもスクーナー船や、島々や、  置去《お...
佐々木直次郎

宝島—–序–佐々木直次郎

「宝島」はロバート・ルーイス・スティーヴンスン(一八五○―一八九四)の最初の長篇小説であり、彼の出世作であるが、また彼の全作中でも最も高名な名作であることは周知の通りである。紀行文、随筆《エッセー》、短篇小説などにおける彼の数年間の文筆生活...
佐々木直次郎

二都物語 上巻 チャールズ・ディッケンズ——-佐々木直次郎訳

序 「二都物語」はチャールズ・ディッケンズ(一八一二―一八七〇)の一八五九年の作である。すなわちこの巨匠が数え年四十八歳の時の作である。作者は一八三六年に諧謔小説「ピックウィク倶楽部」によって一躍ウォールター・スコット以後のイギリス随一の流...
佐々木直次郎

盗まれた手紙 THE PURLOINED LETTER エドガー・アラン・ポー Edgar Allan Poe——-佐々木直次郎訳

Nil 〔sapientiae&〕 odiosius acumine nimio. (叡智にとりてあまりに鋭敏すぎるほど忌むべきはなし) セネカ(1)  パリで、一八――年の秋のある風の吹きすさぶ晩、暗くなって間もなく、私は友人C・オーギュ...
佐々木直次郎

早すぎる埋葬 THE PREMATURE BURIAL エドガー・アラン・ポー Edgar Allan Poe——-佐々木直次郎訳

興味の点はまったく人を夢中にさせるものであるが、普通の小説にするのにはあまりに恐ろしすぎる、というような題材がある。単なるロマンティシストは、人の気を悪くさせたり胸を悪くさせたりしたくないなら、これらの題材を避けなければならない。それらは事...
佐々木直次郎

黒猫 THE BLACK CAT エドガー・アラン・ポー Edgar Allan Poe 佐々木直次郎訳

私がこれから書こうとしているきわめて奇怪な、またきわめて素朴《そぼく》な物語については、自分はそれを信じてもらえるとも思わないし、そう願いもしない。自分の感覚でさえが自分の経験したことを信じないような場合に、他人に信じてもらおうなどと期待す...
佐々木直次郎

黄金虫 THE GOLD-BUG エドガー・アラン・ポー Edgar Allan Poe—-佐々木直次郎訳

おや、おや! こいつ気が狂ったみたいに踊って いる。タラント蜘蛛《ぐも》に咬《か》まれたんだな]『みんな間違い(1)』  もうよほど以前のこと、私はウィリアム・ルグラン君という人と親しくしていた。彼は古いユグノー(2)の一家の子孫で、かつて...
佐々木直次郎

モルグ街の殺人事件 THE MURDERS IN THE RUE MORGUE エドガー・アラン・ポー Edgar Allan Poe——-佐々木直次郎訳

サイレーンがどんな歌を歌ったか、またアキリースが女たちの間に身を隠したときどんな名を名のったかは、難問ではあるが、みなみな推量しかねることではない。 トマス・ブラウン卿  分析的なものとして論じられている精神の諸作用は、実は、ほとんど分析を...
佐々木直次郎

メールストロムの旋渦 A DESCENT INTO THE MAELSTROM エドガー・アラン・ポー Edgar Allan Poe——佐々木直次郎訳

自然における神の道は、摂理におけると同様に、われら人間[#「われら人間」に傍点]の道と異なっている。また、われらの造る模型は、広大深玄であって測り知れない神の業《わざ》にはとうていかなわない。まったく神の業はデモクリタスの井戸よりも深い。 ...
佐々木直次郎

ジーキル博士とハイド氏の怪事件 THE STRANGE CASE OF DR. JEKYLL AND MR. HYDE スティーヴンスン Stevenson Robert Louis———-佐々木直次郎訳

キャサリン・ディ・マットスに 神が結んだ紲《きずな》は解かぬがよい。 わたしたちはやはりあのヒースと風の子でありたい。 ふるさと遠く離れていても、おお、あれもまたあなたとわたしのためだ。 エニシダが、かの北国《きたぐに》に美しく咲き匂うのは...
黒島伝治

反戦文学論——黒島伝治

一、反戦文学の階級性       一  戦争には、いろ/\な種類がある。侵略的征服的戦争がある。防禦戦がある。又、民族解放戦争、革命も、そこにはある。  戦争反対の文学は、かなり昔から存在して居るが、ブルジョアジーの戦争反対文学と、現代プロ...
黒島伝治

農民文学の問題—–黒島傳治

農民文学に対する、プロレタリア文学運動の陣営内における関心は、最近、次第にたかまってきている。日本プロレタリア作家同盟では、農民文学に対する特殊な研究会が持たれた。ハリコフでの国際革命作家拡大プレナムの決議は日本のプロレタリア文学運動が、シ...
黒島伝治

入営前後——黒島傳治

一  丁度九年になる。九年前の今晩のことだ。その時から、私はいくらか近眼だった。徴兵検査を受ける際、私は眼鏡をかけて行った。それが却って悪るかった。私は、徴兵医官に睨まれてしまった。  その医官は、頭をくり/\坊主にして、眼鏡をかけていた。...
黒島伝治

入営する青年たちは何をなすべきか——黒島傳治

全国の都市や農村から、約二十万の勤労青年たちが徴兵に取られて、兵営の門をくゞる日だ。  都市の青年たちは、これまでの職場を捨てなければならない。農村の青年たちは、鍬や鎌を捨て、窮乏と過労の底にある家に、老人と、幼い弟や妹を残して、兵営の中へ...
黒島伝治

二銭銅貨——黒島伝治

一  独楽《こま》が流行《はや》っている時分だった。弟の藤二がどこからか健吉が使い古した古独楽を探し出して来て、左右の掌《てのひら》の間に三寸釘の頭をひしゃいで通した心棒を挾んでまわした。まだ、手に力がないので一生懸命にひねっても、独楽は少...
黒島伝治

豚群——黒島伝治

一  牝豚《めぶた》は、紅く爛《ただ》れた腹を汚れた床板の上に引きずりながら息苦しそうにのろのろ歩いていた。暫く歩き、餌を食うとさも疲れたように、麦藁《むぎわら》を短く切った敷藁の上に行って横たわった。腹はぶってりふくれている。時々、その中...
黒島伝治

土鼠と落盤——黒島傳治

一  くすれたような鉱山《やま》の長屋が、C川の両側に、細長く、幾すじも這っている。  製煉所の銅煙は、禿げ山の山腹の太《ふと》短かい二本の煙突から低く街に這いおりて、靄のように長屋を襲った。いがらっぽいその煙にあうと、犬もはげしく、くしゃ...
黒島伝治

電報——黒島傳治

一  源作の息子が市《まち》の中学校の入学試験を受けに行っているという噂が、村中にひろまった。源作は、村の貧しい、等級割一戸前も持っていない自作農だった。地主や、醤油屋の坊っちゃん達なら、東京の大学へ入っても、当然で、何も珍らしいことはない...
黒島伝治

田舎から東京を見る——黒島傳治

田舎から東京をみるという題をつけたが本当をいうと、田舎に長く住んでいると東京のことは殆ど分らない。日本から外国へ行くと却て日本の姿がよく分るとは多くの海外へ行った人々の繰返すところであるし、私もちょっとばかり日本からはなれて、支那とシベリア...
黒島伝治

短命長命——黒島傳治

ある薄ら曇りの日、ぶらぶら隣村へ歩いた。その村に生田春月の詩碑がある。途中でふとその詩碑のところへ行ってみる気になって海岸の道路を左へそれ、細道を曲り村の墓地のある丘へあがって行った。  墓地の下の小高いところに海に面して詩碑が建っている。...