「2019年5月」の記事一覧

山さち川さち—– 沖野岩三郎
    一  昔、紀州《きしう》の山奥に、与兵衛《よへゑ》といふ正直な猟夫《かりうど》がありました。…
源八栗 —–沖野岩三郎
    一  もうりい博士は、みなとの汽船会社から、こまりきつたかほをして、かへつて来ました。それは…
硯箱と時計—– 沖野岩三郎
 石之助《いしのすけ》が机にむかつて、算術をかんがへてゐますと、となりの金《きん》さんが来て、 「佐…
熊と猪—— 沖野岩三郎
    一  紀州《きしう》の山奥に、佐次兵衛《さじべゑ》といふ炭焼がありました。五十の時、妻《かみ…
愚助大和尚—– 沖野岩三郎
 愚助《ぐすけ》は忘れん坊でありました。何を教へましても、直《す》ぐ忘れてしまふので、お父様は愚助…
岩を小くする—– 沖野岩三郎
 後村上《ごむらかみ》天皇さまの皇子さまに、寛成《ひろなり》さまと申すお方がございました。  まだ、…
蚊帳の釣手—– 沖野岩三郎
    一 万作《まんさく》は十二歳になりました。けれども馬鹿《ばか》だから字を書く事も本を読む事も…
ばべるの塔—– 沖野岩三郎
 まだ、電話も電信も、なんにもない、五六千年も、まへのおはなしです。  ひろいひろい、のはらを、みつ…
バークレーより——- 沖野岩三郎
 サンフランシスコから渡船《フェリー》でオークランドに渡り、更にエス・ビーの電車で五哩程行くと、セ…
にらめつくらの鬼瓦—– 沖野岩三郎
 今雄《いまを》さんは、五年級甲組の一番でした。  京一《きやういち》さんは、五年級乙組の一番でした…
アラメダより——- 沖野岩三郎
アラメダの飛行場へ行った。 『飛行機に乗ろう?』 『およしなさい。落ちたら大変です。奥様に申訳がない…
雪女—— 岡本綺堂
    一  O君は語る。  大正の初年から某商会の満洲支店詰を勤めていた堀部君が足かけ十年振りで内…
火薬庫—— 岡本綺堂
 例の青蛙堂主人から再度の案内状が来た。それは四月の末で、わたしの庭の遅桜も散りはじめた頃である。…
こま犬—— 岡本綺堂
     一  春の雪ふる宵に、わたしが小石川の青蛙堂に誘い出されて、もろもろの怪談を聞かされたこと…
五色蟹—— 岡本綺堂
          一  わたしはさきに「山椒の魚」という短い探偵物語を紹介した。すると、読者の一人…
経帷子の秘密—— 岡本綺堂
     一  吉田君は語る。  万延元年――かの井伊大老の桜田事変の年である。――九月二十四日の夕七つ…
兜 ——岡本綺堂
    一  わたしはこれから邦原君の話を紹介したい。邦原君は東京の山の手に住んでいて、大正十二年の…
女侠伝 ——岡本綺堂
     一  I君は語る。  秋の雨のそぼ降る日である。わたしはK君と、シナの杭州、かの西湖《せい…
廿九日の牡丹餅—— 岡本綺堂
     一  六月末の新聞にこんな記事が発見された。今年は暑気が強く、悪疫《あくえき》が流行する。…
影を踏まれた女 ―「近代異妖編」—– 岡本綺堂
        一  Y君は語る。  先刻も十三夜のお話が出たが、わたしも十三夜に縁のある不思議な話…