「2019年5月」の記事一覧

のんきな患者—– 梶井基次郎
     一  吉田は肺が悪い。寒《かん》になって少し寒い日が来たと思ったら、すぐその翌日から高い熱…
ある心の風景—– 梶井基次郎
一  喬《たかし》は彼の部屋の窓から寝静まった通りに凝視《みい》っていた。起きている窓はなく、深夜の…
ある崖上の感情—– 梶井基次郎
     1  ある蒸し暑い夏の宵《よい》のことであった。山ノ手の町のとあるカフェで二人の青年が話を…
Kの昇天 ――或はKの溺死—– 梶井基次郎
 お手紙によりますと、あなたはK君の溺死《できし》について、それが過失だったろうか、自殺だったろう…
『青空』のことなど—–井基次郎
文藝部から嶽水會雜誌の第百號記念號へ載せる原稿をと請はれたが、病中でまとまつたものへ筆を起す氣力も…
『新潮』十月新人號小説評—– 梶井基次郎
     子を失ふ話 (木村庄三郎氏)  書かれてゐるのは優れた個人でもない、ただあり來りの人間であ…
『亞』の回想—–梶井基次郎
 亞は僕にとつては毎月の清楚な食卓だつた。その皿の數ほどの頁、そしてリフアインされたお喋り。その椅…
「青空語」に寄せて(昭和二年一月號) 『青空』記事 ——梶井基次郎
文藝時代十二月號の小説は、林房雄だけが光つてゐる。『牢獄の五月祭』の持つ魅力が他の小説の光りを消す…
「親近」と「拒絶」—-梶井基次郎
「スワン家の方」誌上出版記念會  佐藤君と淀野の譯したこんどの本を讀んで見て第一に感じることは、プル…
旱天實景—— 下村千秋
         一  桑畑の中に、大きな葉をだらりと力なく垂れた桐の木に、油蝉がギリ/\啼きしきる…
天國の記録—— 下村千秋
彼女等はかうして、その血と 肉とを搾り盡された 一  三月の末日、空《から》つ風がほこりの渦を卷き上げ…
泥の雨—– 下村千秋
 日が暮れると、北の空に山のやうに盛り上つた黒雲の中で雷光が閃めいた。キラツと閃めく度にキーンとい…
壇ノ浦の鬼火—– 下村千秋
     一  天下《てんか》の勢力《せいりょく》を一|門《もん》にあつめて、いばっていた平家《へい…
神様の布団—– 下村千秋
一  むかし、鳥取《とっとり》のある町に、新しく小さな一|軒《けん》の宿屋《やどや》が出来ました。こ…
曲馬団の「トッテンカン」—– 下村千秋
一  いちばん先に、赤いトルコ帽《ぼう》をかむった一寸法師《いっすんぼうし》がよちよち歩いて来ます。…
鬼退治 —–下村千秋
一  頭は少々|馬鹿《ばか》でも、腕《うで》っぷしさえ強ければ人の頭に立っていばっていられるような昔…
飢餓地帯を歩く ――東北農村惨状報告書――    ——下村千秋
一  これは、青森県のある新聞に載せてあったもので、或る農村――八甲田山麓の村の一青年の詩である。詩と…
とんまの六兵衛—— 下村千秋
 昔、ある村に重吉《じゅうきち》と六兵衛《ろくべえ》という二人の少年が住んでいました。二人は子供《…
あたまでっかち—– 下村千秋
一  霞《かすみ》ガ浦《うら》といえば、みなさんはごぞんじでしょうね。茨城県《いばらきけん》の南の方…
馬鹿七—— 沖野岩三郎
    一  紀州《きしう》の山奥に、狸山《たぬきやま》といふ高い山がありました。其所《そこ》には、…