「投稿者: magoroku@tnnt」の記事一覧

里の今昔—– 永井荷風
昭和二年の冬、酉《とり》の市《いち》へ行った時、山谷堀《さんやぼり》は既に埋められ、日本堤《にほん…
裸体談義—– 永井荷風
 戦争後に流行しだしたものの中には、わたくしのかつて予想していなかったものが少くはない。殺人|姦淫…
羊羹 ——永井荷風
 新太郎はもみぢといふ銀座裏の小料理屋に雇はれて料理方の見習をしてゐる中、徴兵にとられ二年たつて歸…
洋服論———- 永井荷風
○日本人そもそも洋服の着始めは旧幕府|仏蘭西《フランス》式歩兵の制服にやあらん。その頃膝取マンテルな…
矢立のちび筆—– 永井荷風
 或人《あるひと》に答ふる文《ぶん》  思へば千九百七、八年の頃のことなり。われ多年の宿望を遂げ得て…
矢はずぐさ—– 永井荷風
(例)寒夜客来[#(テ)]茶当[#(ツ)][#レ]酒[#(ニ)] 一 『矢筈草《やはずぐさ》』と題し…
壥東綺譚—–永井荷風
一  わたくしは殆ど活動写真を見に行ったことがない。  おぼろ気な記憶をたどれば、明治三十年頃でもあ…
放水路—– 永井荷風
隅田川《すみだがわ》の両岸は、千住《せんじゅ》から永代《えいたい》の橋畔《きょうはん》に至るまで、…
買出し—– 永井荷風
 船橋と野田との間を往復してゐる総武鉄道の支線電車は、米や薩摩芋の買出しをする人より外にはあまり乗…
梅雨晴—– 永井荷風
 森先生の渋江抽斎《しぶえちゅうさい》の伝を読んで、抽斎の一子|優善《やすよし》なるものがその友と…
日和下駄 一名 東京散策記—–永井荷風
序 東京市中散歩の記事を集めて『日和下駄』と題す。そのいはれ本文のはじめに述べ置きたれば改めてここに…
伝通院—–永井荷風
われわれはいかにするともおのれの生れ落ちた浮世の片隅を忘れる事は出来まい。  もしそれが賑《にぎやか…
虫干—–永井荷風
毎年《まいねん》一度の虫干《むしぼし》の日ほど、なつかしいものはない。  家中《うちぢゆう》で一番広…
蟲の聲—–永井荷風
東京の町に生れて、そして幾十年といふ長い月日をこゝに送つた………。  今日まで日々の生活について、何の…
男ごゝろ—–永井荷風
大方帳場の柱に掛けてある古時計であらう。間の抜けた力のない音でボンボンと鳴り出すのを聞きつけ、友田…
草紅葉——永井荷風
東葛飾《ひがしかつしか》の草深いあたりに仮住《かりずま》いしてから、風のたよりに時折東京の事を耳に…
雪の日—–永井荷風
曇って風もないのに、寒さは富士おろしの烈しく吹きあれる日よりもなお更身にしみ、火燵《こたつ》にあた…
西瓜——永井荷風
 持てあます西瓜《すいか》ひとつやひとり者  これはわたくしの駄句である。郊外に隠棲している友人が或…
正宗谷崎両氏の批評に答う—–永井荷風
去年の秋、谷崎君がわたくしの小説について長文の批評を雑誌『改造』に載せられた時、わたくしはこれに答…
水 附渡船—– 永井荷風
仏蘭西人《フランスじん》ヱミル・マンユの著書都市美論の興味ある事は既にわが随筆「大窪《おほくぼ》だ…