国枝史郎

国枝史郎

ヒトラーの健全性—– 国枝史郎

ヒトラーが、未来派の絵画を罵倒した記事を見て、ヒトラーらしいなと思った。  そうしてヒトラーが画家として立ったなら、むしろ穏健な、さりとて古くない、ポストアンプレッショニストとして彩管を揮《ふる》ったことだろうと思った。  未来派は、表現派...
国枝史郎

戯作者—— 国枝史郎

初対面 「あの、お客様でございますよ」  女房のお菊《きく》が知らせて来た。 「へえ、何人《だれ》だね? 蔦屋《つたや》さんかえ?」  京伝《きょうでん》はひょいと眼を上げた。陽あたりのいい二階の書斎で、冬のことで炬燵《こたつ》がかけてある...