「梶井基次郎」の記事一覧

海 断片—– 梶井基次郎
……らすほどそのなかから赤や青や朽葉《くちば》の色が湧いて来る。今にもその岸にある温泉や港町がメダイ…
過古—— 梶井基次郎
母親がランプを消して出て来るのを、子供達は父親や祖母と共に、戸外で待っていた。  誰一人の見送りとて…
温泉—– 梶井基次郎
     断片 一  夜になるとその谷間は真黒な闇に呑まれてしまう。闇の底をごうごうと溪《たに》が流…
闇の書—– 梶井基次郎
一  私は村の街道を若い母と歩いていた。この弟達の母は紫色の衣服を着ているので私には種々のちがった女…
闇の絵巻—– 梶井基次郎
最近東京を騒がした有名な強盗が捕《つか》まって語ったところによると、彼は何も見えない闇の中でも、一…
愛撫—— 梶井基次郎
 猫の耳というものはまことに可笑《おか》しなものである。薄べったくて、冷たくて、竹の子の皮のように…
のんきな患者—– 梶井基次郎
     一  吉田は肺が悪い。寒《かん》になって少し寒い日が来たと思ったら、すぐその翌日から高い熱…
ある心の風景—– 梶井基次郎
一  喬《たかし》は彼の部屋の窓から寝静まった通りに凝視《みい》っていた。起きている窓はなく、深夜の…
ある崖上の感情—– 梶井基次郎
     1  ある蒸し暑い夏の宵《よい》のことであった。山ノ手の町のとあるカフェで二人の青年が話を…
Kの昇天 ――或はKの溺死—– 梶井基次郎
 お手紙によりますと、あなたはK君の溺死《できし》について、それが過失だったろうか、自殺だったろう…
『青空』のことなど—–井基次郎
文藝部から嶽水會雜誌の第百號記念號へ載せる原稿をと請はれたが、病中でまとまつたものへ筆を起す氣力も…
『新潮』十月新人號小説評—– 梶井基次郎
     子を失ふ話 (木村庄三郎氏)  書かれてゐるのは優れた個人でもない、ただあり來りの人間であ…
『亞』の回想—–梶井基次郎
 亞は僕にとつては毎月の清楚な食卓だつた。その皿の數ほどの頁、そしてリフアインされたお喋り。その椅…
「青空語」に寄せて(昭和二年一月號) 『青空』記事 ——梶井基次郎
文藝時代十二月號の小説は、林房雄だけが光つてゐる。『牢獄の五月祭』の持つ魅力が他の小説の光りを消す…
「親近」と「拒絶」—-梶井基次郎
「スワン家の方」誌上出版記念會  佐藤君と淀野の譯したこんどの本を讀んで見て第一に感じることは、プル…